うさぎ宅配便(氷涼祭)

「「きたの!」」
ドアをいきなりバターンと開けるのは。顔なんか見なくてもわかる。うさぎ宅配便s。この祭り時期、うさぎ宅配便はお休み。今日の彼女たちはお客様だ。お揃いの浴衣を注文している。
「一番素敵で」「一番かわいいの」「「できた?」」
はいはい。
トルソーに着せた浴衣を見つめる。
「「やるじゃん!」」
どうやらお気に召したみたい。二人はいつも色違いの浴衣を注文する。今年は、花火の布を使った。浴衣の中、花火があがり続けてる。
「「ありがとっ」」
風と共に去る。いつもより急いでる。そりゃそうよね。
息を切らせるうさぎ宅配便s。
「「はやく…風船…」」
家の前にうさぎのカタチの風船を結ぶ。
「よかった」「間に合った」
いい子にしないとママは帰ってきてくれない。氷涼祭は我々にとってママと過ごせる唯一の日々。
「「はやく寝なきゃ!」」
明日の朝、ママにあえる。

お味噌汁の匂いがする。卵焼きの匂いもする。トントントン。朝の音がする。ぴくぴく動くウサ耳。お布団の中、二人は同時に目を覚ます。
((きてる!))
ガバッ。
「ママ」「ママ」「「ママッ!!」」
台所の母うさぎ、否、ウサ耳補聴器装着の母親に我々は、力一杯飛びつく。

「うるっさーい」
ママは相変わらずだ。
「「ママあのね」」
「もう身長100センチごえ!」「彼氏がなんと15人目に!」「靴も小さくて」「もう一人に言い寄られてて」
「「新しくしようかなって!」」
ニコニコしてうんうん頷くママ。ママ、補聴器切ってるな。タイミングずれてる。
((3人でご飯食べてると、いつもこんなだった気がする。嬉しい。でも嬉しいって言えない。そしたらいつもは嬉しくないみたいだし、そしたらママが困るかもだし。困んなかったらそしたら我々が困るかもだし。言えない。))
仕立屋の店長が見たなら驚くくらいの静かな食事。なんでもない特別な時間が過ぎていく。

「きた!」「ふってきた!」「「氷!」」
我々は、空に向かって大きく口を開けて駆け回る。子供だから。
「なんでっ」「落ちてこないのっ」
不思議。不思議発見。ママがニヤニヤと見てる。
嬉しい。キラキラが?
嬉しい。わかんないけど。
嬉しい。なんでもいいの。
嬉しい。嬉しい。

【このお話はツイッター内での企画『空想の街 氷涼祭』で書いたものです】