アンパンマン鎮魂曲

いつかこんな日がくることはなんとなくわかってた。
顔を取り替えても力が出ない。
とうとう魂がちぎれてしまった理由を、けれど僕は知っている。
僕の体を揺さぶるみんな。泣いたり叫んだり。
ごめんね。みんなに任せて大丈夫だとわかったんだ。
だから眠る。世界はみんなにお任せするよ。

実は中身はいつもあんこってわけじゃなかった。
チョコの日もあれば高菜の日もあったって知らなかったでしょ。わからなかったでしょ。
中身がちょっと変わっ たところで、僕は変わらず僕だった。
美味しい時もそうじゃない時も。
だから大丈夫。腐らなければ、きっと美味しくなれるはずさ。

君はきっとフツウに生きてるだけなんだろう。けれどもそれは僕らのふつうとあまりに違うものだった。
いつしか君は悪者にされていたね。
僕らと君と。違う普通を曖昧に両立させるためにはただ戦うしかなかった。けれど。
例えば君のお腹が空いたら僕は君にもパンをあげる。さ、お食べ。

パンを半分こしてあげる。
一個のパンはどこまでもずっと永遠に半分こできちゃうよね。
気がつけばとても小さくなって誰の空腹も満せない。
だけどいいよ。半分こしよう。
君が、僕が、笑うためにはきっと一個より半分こだ。
笑ったら一緒にパンを作ろう。お腹までいっぱいになっちゃおう。

やってきたヒーローは何もできなかった。僕と一緒にオロオロしてる。
敵から隠れてこれ食べてって、パンをちぎってヒトカケくれた。
小さな背中。庇われて食べるパンはことのほかおいしかった。
あれから困ると彼を呼ぶ。
解決しないと分かっているのに、お茶を淹れて、空を見上げる。