両親の仲の悪さは物心つく頃には解っていた。会話なんかなかったし食事を共にすることもない。
家で過ごすことの少ない父だったけれど寝る前の読み聞かせだ けは欠かさなかった。
明日から私も中学生。
自分で読むよ、と父に言うと消え入りそうな声で「そうか」と言ってフッと宙に消えた。

まさか幽霊?思い当たる節はある。
「あの人はもういないの」私が父について話そうとすると母はいつもそう言って拒絶した。
そんな時には決まって父が、「あ あやって僕を否定するんだ」と悲しそうに肩をすくめるものだから父の言葉を信じたけれど、
母が正しかったのだ。私は母に尋ねる。

父は死んでいるの?どうして仏壇がないの?ねえ、答えて!
母は驚いた顔をしてそれから少し言い難そうに語りだす。
「お父さんは死んでないわ。もういないと言ってきたのはごめんね、不倫だから。会えない父親はいないのと一緒でしょう?」ショックだった。
あの父親ヅラした幽霊は一体。