白ヤギ黒ヤギ組曲

白ヤギさんからお手紙ついた。
黒ヤギさんたら読まずに食べた。
ねえいい加減食べないで読んであげたら?
郵便屋さんが窘めますと黒ヤギさんたら言いました。
「食べちゃうくらいに大好きだって白ヤギさんには伝わるわ」
ヤギって本当にわからない。
郵便屋さんは今日もヤギの間を右往左往。

白ヤギさんからお手紙ついた。
黒ヤギさんたら読まずに食べた。
ねえいい加減食べないで読んであげたら?
郵便屋さんが窘めますと黒ヤギさんたら言いました。
「続けることに意義がある。手紙を読み始めぬ事こそが手紙を続ける秘訣だろう」
今日も明日も明後日も、郵便屋さんは右往左往。

白ヤギさんからお手紙ついた。
黒ヤギさんたら読まずに食べた。
ねえいい加減食べないで読んであげたら?
郵便屋さんが窘めますと黒ヤギさんたら言いました。
「お前も食べてみろ」渋々一口。これは旨い!
「手紙とは思いやりだ」
それ故の進化。ならば読む側も。
「あ?」
何でもないデス。

白ヤギさんからお手紙ついた。
黒ヤギさんたら読まずに食べた途端に苦しみだす。
効いたか。
手紙には僕が毒を塗った。
手紙を愛し郵便屋になった僕は、読みもせず食べる彼を許せなかった。
あとは白ヤギの家に毒を隠すだけ。
おや雪だ。タイヤの跡が残ってしまう。
畜生。僕は空を睨んだ。

白ヤギさんからお手紙こない。
どうしたの。確かめたい。外は怖い。けれどけれど。
僕は扉を開けた。
白ヤギさんに会いに行く。
一面に広がる廃墟に僕は思い出す。
白ヤギは僕だ。
自分で自分に手紙を書いては孤独を慰めていたのだ。
僕が書かなきゃ手紙はこない。
世界はもう、滅びたのだ。