結婚のきっかけは父が母の大事な皿を割ったこと。
それから父は陶芸家の道を志したという。
ダメ、これもダメ。
母はそう言って差し出された皿を次々割った。
これじゃ代わりにならないわ。
あんまりだ。僕が怒ると父は笑う。
愛しているからずっと側にいたいのさ。
僕には意味が解らない。

父は傑作を作った。
その皿は多分6桁の値がつくであろうほどの代物。
少し迷ってそれから母にその皿を差し出した。
母の顔が曇る。
そして、「完璧ね」苦しげに絞り出したその声を聞くやいなや、父は皿を奪い、割った。
「ゴメン俺が気に入らない」
母は泣いた。
僕には意味が解らない。

父は皿を作らない。
男のケジメと思っていたけれど、こんな結果はもういらない。
僕には意味が解らない。父も母も今までと変わらなく見えるけれど。
一つだけ変わったことがある。僕だ。
僕の頭に最近小さな皿ができた。
母さんの血だな。
ああそうか。ようやく、僕にも意味が解った。