旅人と鬼と村人と

やめろ、鬼が何をしたというのだ。
旅人はそう言って豆まきを遮った。
山へお帰り。所在無げな鬼たちを見送ると、旅人は満足そうに村を後にした。
どうしよう。鬼たちはざわめく。
投げられた豆を育て金に変えて、1年の糧としていた。
飢えれば人を喰わねばならぬ。どうしよう。

旅人が再び訪れると村には人の気配がない。
村中探して一匹の鬼を見つけた。
畑を荒らす鬼に悟る。鬼が人を喰ったのだ。
以前助けたその恩を無にされた気がして、旅人は鬼を切り捨てる。
嘗て暮らした村を捨て、村人たちは鬼と暮らす。
夕餉の野菜を穫りに出かけた鬼の帰りを待ちわびる。