Harmony

歌う機械は、二体でひとつの螺子を使う。一体動けば一体止まり、交わらないメロディー、生まれないハーモニー。今日もまた、片方だけが動き出す。けれど。ある日、掌に記された文字。
「キミトウタイタイ」
書いたのは君?動かないもう一体に、歌う機械は歌を捧げる。
僕の掌に残された手紙。
「ボクモキミトウタイタイ」
掌を胸に、考える。考える。情報を組み合わせて、完璧な解を。 僕ら二体、足りない螺子はひとつだけ。 けれどもそれは無二の螺子。なければとても動けない。ハーモニー。君と一緒に。 僕は、僕の解を、君の掌に書いた。掌の解。共有螺子をのぞいては、まるで同じの僕らだから、解は僕にも妥当であった。君が可ならば僕も可だ。僕は君の部品を、僕の部品を、正しい順序でそっと外す。壊れていく僕ら。少しずつ少しずつ。100%の成功などないことを知る僕らの、それは世界への小さな反逆。
壊れ続ける僕らと増え続ける掌の手紙。僕らお互い励まし合って、そしてお互い壊し合う。ああもうそろそろ頃合いだ。 僕は歌を歌う。君に届くかな。僕は歌を歌う。きっと届くはず。僕ら二体への鎮魂歌を。そして。僕らの未来を、はじめようか。組み立てる。僕らを。僕らの未来を。掌の手紙、励まし合って。眠る君に、歌を歌う。大丈夫。大丈夫だよ。もうすぐ僕ら、生まれ変わる。新しい世界。新しい僕ら。 歌を歌って、その時を待つ。
僕ら共通の無二の螺子を、僕達の新しい、大切な場所にそっとはめる。
「ハローハロー」
はじまりの歌を歌う僕。 そして、
「ハローハロー」
はじまりの歌を歌う君。僕のメロディー君のメロディー。妙なる僕らのハーモニー。歌う僕らは顔も合わせられないけれど、だけど、幸せ。
「「キミトウタイタイ」」
僕らのたったひとつの願い。叶って僕ら共に歌う。二系統の歌回路をもつ、僕らの体はひとつきり。足りない螺子を共有するため、僕ら一体の機械になった。向かい合えない僕らだけれど、そんなの何が問題だろう。だって、
「「ボクハキミトウタッテル」」

「ねえママ、お歌がきこえる」
世界に響くハーモニー。
「機械の歌よ」
「機械の?」
「そう、夢を叶えた機械のお歌」
「綺麗。私も歌いたい」
「それじゃあママが教えてあげる」

その歌はそうして、世界を巡り、やがては時をかける。